旅するチカラ

ファイブスタークラブ インタビュー
「世界を駆け巡るプロたちの海外旅行記 いつもエネルギッシュで留まることを知らない 作家・柘いつかさん」

高校卒業後、コピーライター専門学校『宣伝会議』に通い、プロの書き手として歩み始めた。世界各国を飛び回りながら、マーケティングリサーチ、商品開発やネーミング。作家そしてクリエイターとして著作活動、各界著名人のインタビューなど、出版、広告にかかわるさまざまなメディアの世界で活躍。
“出逢い”と”成功”をテーマとする著書が多い中、とにかく行動することの大切さを説いてきた。実際のいつかさんもまた、まさにエネルギッシュで留まることを知らない人だ。対面しただけで底知れないパワーを感じる。
実は、いつかさんは、ファイブスタークラブ創業以来ご利用いただいているお客様でもある。
最近では今年の1月1日出発でインド旅行へ行かれた。元旦の成田空港はお祝いムード満載。神主がおはらいをし、枡酒が配られ、他にもいろんなプレゼントもあり、元旦の成田空港は好奇心旺盛ないつかさんの心を掴んだそうだ。
南アフリカの子供たちと

いつかさんにとって作家とはどのようなお仕事ですか?

今後、本はコア・メディアになる時代だと思います。
音楽や絵画と違って、マン・ツー・マン(Man to Man)で相手に訴えかける。
わかりやすく言うと”ラブレター”のようなものでしょうか。
私の本を読んだ全く知らない人からメールをいただいたり、講演会やトークショーでお会いしたりする中で「影響された」とか「触発された」といった嬉しい言葉をいただいたり、さらには「恋人と別れた」「離婚した」という報告をいただき、驚かされたこともありますね(苦笑)。

どの作品が最も印象に残っていますか?

そうですね。どれに対してもありますが、やっぱりデビュー作の『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』(PHP研究所)ですね。
それと、私が初めて男性向けに書いた作品で『成功する男はみな、非情である。』(PHP研究所)です。
文庫本の方(だいわ文庫)はコンビニにも置いていただいているので、この本はおかげさまで10万部を超えました。
それと先程お話した、「これがダメだったら作家をやめよう」と思いながら書いた作品のひとつです。
やめようと思って書いたものがなぜかと売れるんですよ(笑)。
本の神様がいるとしたら、これはやめさせてくれないのかなと思ったりもしています。

ラオス ルアンパバーンのメコン川クルーズで立ち寄ったモン族の村

いつかさんはこれまで数多く海外へ行かれていらっしゃいますが初めて行かれた海外への旅は?

よく「最初の旅でその人の人生が決定される」と言いますが、私の場合は、20歳のときに行ったアメリカです。
当時六本木に『バレンタイン』というライブハウスがありました。
その時大人気だったマリーンなども出演する大人のムード漂う素敵な店でした。
私は他にやりたいこともなかったので、そのライブハウスのオーディションを受けてみたら何と合格。
こうなると、ジャズシンガーとしての自分の実力を試したくなり血が騒ぎます。
ちょうどその時期、叔母がアメリカ人と結婚してノースカロライナ州に住んでいたことを思い出し、まずは、叔母のところに行くことにしたのです。
しばらく叔母の家にお世話になった後、ニューヨークへ向かい、さらにバークレー音楽学院の知人に会うため、ボストンへも足を延ばすことにしました。
ですが、初めての海外の旅で不安だらけでした。
でも、次々と出逢う人々が、私に知恵と勇気を与え触発してくれました。
私って本当にまわりの人たちに恵まれているんですよ。

今はもう見られないけれど、マドンナがデビューした頃のニューヨークは、ワシントンスクエアや路上、地下鉄でパフォーマンスをしており、キース・へリングがまだ存命で、街中に落書きをしていました。
ジャズマンで有名なハービー・ハンコックの音楽仲間のドラマーの紹介で、私はクインシー・ジョーンズの関係者宅にホームステイできることになり、昼間はギ ャラリー、夜はライブハウスをめぐり多くのアーティストと出逢い感性を磨くことができました。
ギャラリーでオノ・ヨーコさんに会えたのも嬉しい思い出です。
でも、本物のジャズに触れれば触れるほど、自分に流れている「血の違い」を実感してしまいました。そんなことからジャズシンガーへの道は諦めました。
帰国してオーナーに、「やっぱりアメリカ人と日本人とは血が違いますね」と言ったところ「二十歳でそれがわかるのはすごい」と言われました。
やはり日本人ならJポップか演歌でしょうか。これが私の初めての海外旅行体験です。

キューバ ヘミングウェイ・バーにて
キューバ ヘミングウェイ・バーにて

これまで取材やお仕事などで50ヶ国近く世界を旅してこられたと伺いました。それはどのような旅だったのでしょうか?

観光地といわれるメジャーな都市を訪れることも多かったと思いますが、珍しいところではキューバ、クロアチア、プラハなどにも行きました。
一人で海外の友人宅を訪ねる旅から、仲間15人で行ったL.A.まで、さまざまな旅の形を楽しんできました。特に同世代の女性の価値観や感性に興味がありますので、旅先では積極的に海外で活躍する女性たちに会って、話を聞くようにしています。
あと、日本人の子供がいかに恵まれているか、ということや、例えば味覚が優れている点など、日本人であることに誇りを感じることもありました。それから、シリコンバレーの女性マーケッターが、「世界基準はアバウトなのよ!」ということを教えてくれました。

サンフランシスコ・ツインズと一緒に
サンフランシスコ・ツインズと一緒に

これまで行かれた旅の中から特に思い出に残る旅を紹介していただけますか?

作家デビューして超多忙な1年が経過した頃、久しぶりに海外旅行に出掛けました。
仕事の足掛かりをつけに行く用事もあったのですが、20歳の頃に暮らして以来のニューヨークと、ずっと憧れていたサンフランシスコを訪れました。
ニューヨークはいろいろとかわって変化していて、月日の移ろいを感じましたが、新しい出逢いもあり、とっても楽しめました。そしてサンフランシスコでは、カルフォルニア・ワインのメッカであるソノマでも、一番の名士といわれる、『ロバート・ヤング・エステート』のオーナーのお宅へお招きいただきました。

ロバート・ヤング邸にて

すると、2週間後にご親戚が結婚されるというので “ガーデン・ウェディング”に招待され、今度はなんと、南アフリカ共和国へ旅立つことになりました。
日本旅行作家協会の会員になったのをきかっけに、旅行作家として長旅も必要だと思ったのと、サンフランシスコで2週間過ごして、帰国して2週間後にアフリカに飛び立つというのは実験的な試みだと感じたからです。
アメリカ、アフリカ、言葉は似ていますが、まるで違っていましたね(笑)。
アフリカは丸一日飛行機に乗って、背中が鉄板状態に(笑)。
そんな思いまでして行った甲斐あって、背中の痛さを吹き飛ばしてしまうぐらい、素晴らしいものがたくさんありました。

南アフリカの子供たちと

アフリカは、大地から惚れてくる感じがして、自分が”生かされている”ことを感じることができました。
今後は、アフリカ大陸の他の国にも行ってみたいですね。
ステレンボッシュの果樹園で開かれたガーデン・ウエディングの参加者は何と総勢200名!!豪邸なプールの上に真っ白なテントを張って催され、私は、ベトナムでオーダーしたアオザイ姿で出かけました。
夕方から披露宴で、世界中からワイナリー関係者も集まって、シャンパンからスタート。
生バンドの演奏も入ってとっても素敵な雰囲気で盛り上がりました。
美味しいけれども度数が高い南アフリカのワインのせいで、日本人はみんな出来上がってしまいました(笑)。

ハノイ ベトナム民族博物館で結婚式に遭遇
ハノイ ベトナム民族博物館で結婚式に遭遇

いつかさんにとっての旅のスタイルのようなものは何かお持ちですか?また、年令を経るに従い、旅のスタイルは変わるものですか?

そんなに治安が悪くなければ、海外は全て行ってみたいです。
それと、旅に何かテーマをもたせるとおもしろいと思います。
私の友人が新婚旅行でイタリアを一周したときは「どこに行っても生ハムメロンを食べる」というテーマで旅をしていたそうです。
味は店によっても地方によって違うでしょうから、それをテーマに日記を書いたりしても面白いでしょうね。
他にも、ビートルズや村上春樹作品ゆかりの地を訪れるのも最近の流行です。
私は過去に台湾で、「どこに行っても麻婆豆腐を食べる!」をテーマに旅しました。麻婆豆腐も店によって味が違いますからね。おもしろかったですよ。
あとは、「あえて過酷な状況に自分の身を置く」というのもいいと思います。
例えば、「そんな短い日程で何都市も廻れないだろう」と思うほど、詰め込んだ日程を作ったりすることですね。
ハードな旅を終えたあとは妙な達成感がありますよね。
年齢を重ねるに従って、多くのことを1日に詰め込むのが億劫になり、変わった旅行スタイルは1日1つになりました(笑)。
でも、私の場合、旅先では妙に元気になったりすることも多いので、今年の始めに行ったインドは「あえて過酷な状況に自分の身を置く」状態にな っていましたよ(笑)。
それから、旅行の時はいつも、文庫本を数冊持って行き、ホテルでは読書もし、飛行機内では最新の映画を観ることにしています。

台北にて台湾式シャンプーにトライ
台北にて台湾式シャンプーにトライ

いつかさんの元気の素は何でしょう?

旅に行くとリフレッシュできますね。
立ち止まって考えたり、何か新しいことを始めるターニングポイントや、切り替えとなる時期に旅をすることはとても意味のある行為だと思っています。
ここ最近、海外旅行は、年間で行けて2~3回ですが、旅先ではいろいろなことを考える機会も持てますし、大事なインターバルの時間だと思います。
私はバブル世代で、当時は旅の情報誌がたくさん出ていました。
私も若くて元気な頃で、世界中旅してみたいと思っていました。
当時は国内旅行の方が海外旅行よりも高額で、敷居が高かったのですが、今は国内旅行にも行くようにしています。
それに加え最近は、東京で遊ぶ昭和の遊び、散歩と銭湯も私の元気の素になっています。

直面する目標は?また、将来の目標や夢は?

おかげさまで「そろそろ小説を書いてみませんか」などと周囲から勧められています。
それと、小説を書く環境を整えるために、田舎暮らしもいいかもしれませんね。でも、これから既刊の書籍が電子アプリに切り替わっていくタイミングになっていて、ちょうど3冊出たところです。

最後に、現代に生きる若者たちにメッセージをお願いします

旅はメンタルを強化します。
旅での経験や失敗が人を育てるように思います。”
圏外”を怖がる若者が増えているようですが、安全を確保したうえで海外にもどんどん飛び出して行ってほしいですね。
国内だけでは得られない新しい価値観が芽生え、視野を広げ、リフレッシュし、成長させてくれます。
また、旅は心と身体をデトックス&リセットしてくれます。日常を忘れ、非日常に身を置いて、ゆったりとラグジュアリーな時間を過ごすことで、「自分探し」を越えて「自分忘れ」まで到達することが、旅の最高の醍醐味だと思いますが、いかがでしょう。

Interviewer & Editor : 森 裕(ファイブスタークラブ)

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